| 性別 | 男性 |
|---|---|
| 転職時の年齢 | 36歳 |
| 最終学歴 | 大学卒業 |
| 転職前の勤続年数 | 3〜5年 |
| 転職経路 | 転職サイト・スカウト |
| 利用した転職サービス | Green |
| 応募社数 | 2〜3社 |
| 転職活動の期間 | 1〜3か月 |
| 転職した年 | 2024年 |
| 総合満足度 | ★★★★★ 3(普通) |
| 転職前 | 転職後 | |
|---|---|---|
| 業種 | 転職前インターネット・広告・メディア | 転職後IT・通信 |
| 職種 | 転職前管理・事務・スーパーバイザー | 転職後管理・事務・スーパーバイザー |
| 年収 | 転職前800〜1000万円 | 転職後800〜1000万円 |
| 雇用形態 | 転職前正社員 | 転職後正社員 |
※本記事は個人の感想・実体験に基づくものです
一人目の法務担当としてIPOに挑む
私は2024年6月末に前職を退職し、7月から本格的に転職活動を始めて、9月1日に現在の会社に入社しました。前職はEC支援事業を手がける上場ベンチャー企業で、転職先はAI開発とBPO事業を行う企業です。30代後半になった今も、前職・現職ともに正社員として働いています。
前職に入社したのは2020年9月です。私は一人目の法務担当者として、名ばかりの法務部長という肩書きで加わりました。与えられたミッションはIPOの達成です。
面接の段階では上場を目指していることがほんのりと匂わされる程度でした。入社後に具体的なスケジュールがすでに迫っていることを知り、正直かなり驚きました。
入社2日目に迫った上場審査の不備対応
IPOに向けて求められていたのは、上場審査に耐えられる組織をつくることでした。私が入社する前の段階でコーポレートメンバーが社内規程の制定までは済ませてくれていたのですが、規程と実際の現場の運用が一致していない部分がまだ多く残っていました。
そこで各部門の業務をひとつひとつ棚卸しし、規程を現場の実態に合わせて見直し、社内説明会を開いて定着させるところから仕事を始めました。
ところが入社2日目にして証券会社から数多くの不備を指摘され、その日から約2週間、終電まで働く日々が続きました。法務だけでは対応しきれない内容だったため、営業やエンジニアの部署に一時的に席を置かせてもらい、担当者と直接やり取りしながら必要な資料や運用を整えていきました。
入社したばかりで社内業務への理解も浅く、各部門との信頼関係もまだできていませんでした。業務を把握することと関係を築くことを、同時に進めるしかありませんでした。
IPOを達成したあとは従業員数が300人を超え、担当する範囲も法務・総務から人事等を含めたコーポレート部門全体へと広がっていきました。人事制度や評価制度の整備、バックオフィス部門のチームづくりなどに携わり、最終的にはコーポレート全体を統括する役職に就くことになりました。
上場後の方針のずれが招いた退職
転職を考えるようになった一番の理由は、上場後に経営陣とコーポレート部門との間で方針のずれが大きくなっていったことです。直接のきっかけになったのは、取締役会を含む経営陣全体で決めたはずの制度が、あとから代表の判断で変更され、その責任がコーポレート部門にあるかのように扱われたことでした。
経営判断として方針を変えること自体はあり得ることだと思います。ただ、変更の経緯を説明しないまま特定の部門の責任にされる対応には納得できませんでした。その後、直上のCFOが退職し、本部長だった私も退職を決めました。
同じ時期に、部下を含むコーポレート部門の社員も多く辞めていきました。コーポレート部門にとって株主総会は一年の締めくくりとなる大きな節目なので、2024年6月末の株主総会を終えてから会社を離れることにしました。
資格が武器になったバックオフィスの転職
退職の時点で次の勤務先は決まっておらず、不安がなかったといえば嘘になります。それでも、前職在籍中に行政書士やほかの法律系資格を取得していたことに加え、以前からスカウトを受けることも多かったので、転職活動自体は進められるだろうと考えていました。
バックオフィス職は営業職と違って成果を数字で示しにくい分、資格によって知識や能力を客観的に示せたことは、選考の場でも役立ちました。
Green・ビズリーチで進めた転職活動
転職活動では、以前から登録していたGreen、ビズリーチ、Wantedlyを使いました。プロフィールを詳しく書き込んでいたこともあり、自分から企業に応募することはなく、企業から届くスカウトを中心に検討していきました。
具体的に声がかかったのは5社、そのうち3社の面談・選考を進め、最終的に3社すべてからオファーをいただきました。
会社を選ぶ基準にしていたのは、今後成長が見込める業界であること、コーポレート責任者としての経験を活かせること、経営者の倫理観が高いことの3点です。面談の内容だけでなく各社のオウンドメディアにも目を通しました。
創業者を過度に称賛するような社内行事があったり、本来当たり前であるはずの有給休暇の取得を特別な福利厚生のように紹介していたりする会社は、候補から外すようにしていました。
CEO・CFO同席で臨んだ選考面談
現在の会社からは、2024年8月前半にGreen経由でスカウトを受けました。AIは今後も成長が見込める業界であることに加えて、その中でも比較的長い事業実績を持つ会社だったことに興味を惹かれました。
法務やコーポレート部門の責任者としての経験を活かせるポジションだったこともあり、選考に進むことにしました。
選考はWeb面談が1回、対面での面談が1回という流れでした。最初の面談には取締役のCFOが、次の面談には代表のCEOとCFO、それに一緒に働く予定の社員が同席してくれました。
形式的な質問を重ねていくような面接ではなく、これまでの経験や会社の状況について、じっくり話し合うような面談でした。出席者の構成からしても採用の本気度が感じられました。
面談で主に聞かれたのは、前職で大変だったことです。私はIPOという結果だけでなく、入社直後に上場審査の不備に対応したこと、規程を現場の運用に合わせて作り直したこと、営業やエンジニアを巻き込みながら運用を定着させていったことなど、自らの行動を具体的に伝えました。
あわせて、結果として組織がどのように変わり、どう成果が出たのかも説明しました。IPOを経験したという経歴だけでなく、実際に何をしてきたのかを自分の言葉で説明できたことが、評価につながったのだと思います。
年収870万円を引き出した条件交渉
内定が出たのは、9月1日という入社予定日のおよそ1週間前で、条件が決定したのもほんの数日前でした。前職の年収は現金給与が約820万円、譲渡制限付株式のRSが約30万円分でしたが、ほかの2社からはそれぞれ850万円、860万円の提示を受けていました。
そこで現在の会社の人事担当者には、その金額と自分の生活面の事情を正直に伝え、具体的な希望金額は伝えず、後悔のない条件にしてほしいと相談しました。
最終的な入社時の条件は、現金給与が870万円、RSが約20万円分です。RSがどのような条件で確定するのか具体的な部分まではその時点で確認できていなかったので、他社の提示額を上回る現金給与のほうを重視しました。
入社後には約50万円の昇給があり、現在の現金給与は約920万円になっています。RSは入社時とほぼ同じ水準ですが、3年間の譲渡制限がついているため、初年度分が確定するのは来年です。
結果として年収は前職より上がりましたが、今振り返ると、入社時にもう少し交渉できたのではないかとも思います。企業側は採用活動に相応の費用と時間をかけていて、最終面接まで通過した候補者にはできれば入社してほしいと考えているものです。
ほかに適任者が少ないと判断できる状況であれば、他社からの提示額や自分の希望条件を伝えたうえで、入社前にきちんと交渉しておいたほうがよいと思います。

フルリモートで残業が激減した働き方
現在は法務を担当しながら、M&Aや難易度の高いコーポレートアクションを中心に、総務部門なども管理し、子会社の役員も務めています。前職・現職ともにフルリモート・フルフレックスという働き方は共通していますが、残業時間は大きく減りました。
前職では平均して1日1時間ほどの残業があり、休日にもSlackで連絡が飛び交うことがありました。現職では株主総会や決算期を除けば残業はほとんどなく、休日に業務連絡が届くこともありません。
法定外の福利厚生はほぼなく、慶弔見舞金のような制度もありませんが、福利厚生を手厚くするのではなく報酬というかたちで社員に還元していく方針だと聞いています。ハラスメントもなく休暇も問題なく取得できているので、勤務環境そのものに大きな不満はありません。
AIの最新事情と行政との関係構築
転職して得られたものとしては、AIに関連する行政の動きや最新事情に詳しくなったことが大きいと感じています。実際の業務にもAIを取り入れるようになり、以前より少ない労力で仕事を進められるようになりました。行政機関との関係を築けたことも収穫です。
AI業界で比較的長い実績を持つ会社に在籍していること自体が評価され、外部から届くオファーの内容も以前より良くなりました。仕事に余裕がある時期には、資格の勉強や副業に時間を使えるようにもなりました。
目標や評価基準が見えにくい社風
一方で、入社前に期待していたほど、新規事業とAIを組み合わせて急成長を目指すような動きは見られませんでした。既存の知見や先行者としての実績を活かした事業が中心になっていて、会社の成長に伴って自分の役割がさらに広がっていくイメージは、今のところ持ちにくい状況です。
良くも悪くも緩いため、仕事の目標や評価基準もあまり明確ではありません。難しい案件を終えても具体的なフィードバックは少なく、昇給のタイミングでも詳しい評価理由が伝えられることはありませんでした。
M&Aの案件でも、進める目的や目指すべき条件が経営陣から十分に示されないまま「いい感じに進めてほしい」と言われることがあります。分業が進んでいることもあって、ほかの社員が何を担当しているのかを共有する文化もあまり根づいていません。
転職の満足度は10点中6点
残業が少なくハラスメントもない点には満足していますが、仕事の目的や評価が見えにくい部分には、やりがいの面で物足りなさも感じています。10点満点で採点するなら、年収面と働き方は7点、仕事内容は6点、社風は5点というところで、転職全体としての満足度は6点程度です。
一般的に見れば、年収も市場価値も上がったので転職を後悔してはいません。ただ、勤務条件だけでなく、経営方針や評価制度、入社後にキャリアがどう広がっていくのかまで確認しておく必要があったと、今になって感じています。
成長業界を選ぶ転職のすすめ
これから転職を考える方には、やりたいことがまだはっきり決まっていないのであれば、今後成長していく業界を選ぶことをお勧めします。業界の成長性は給与水準はもちろん、経験できる仕事の内容やその後のキャリアにまで大きく影響してきます。
顧客や市場が支払える金額によって社員の報酬水準も決まってくるものなので、成長が見込みにくい業界で大幅な昇給を目指すには限界があります。
また、希望する職種で入社できなかったとしても、入社後に職種を変えられる会社はあります。まずは営業やカスタマーサクセスのように採用の間口が比較的広い職種で成長業界、成長企業に入り、社内で実績をつくってから希望する職種へ移っていくという方法も考えられます。
特に20代であれば、経験だけでなくポテンシャルや意欲を評価してもらえる機会が多くあります。未経験の分野に挑戦しやすい時期には限りがあるので、成長分野に関心があるなら、できるだけ早く挑戦しておいたほうがよいと思います。
バックオフィス職の場合は、実務経験に加えて資格を取得しておくと、面接で自分の能力を説明する材料になってくれます。
数年後に手元へ残るものを想像する
今回の転職では年収と働き方が改善し、AIに関する知識や経験も得ることができました。そのぶん、仕事の目的や評価制度、会社の成長性を事前にしっかり確認しておくことの大切さも、身をもって学びました。
転職先を選ぶときは、いま提示されている条件だけでなく、その会社で数年働いたあとにどんな経験や選択肢が自分の手元に残っているのかまで、想像しておいたほうがよいと思います。

入社時に受け取るRSは確定条件まで確認する
この体験談は、EC支援のベンチャーからAI開発の企業へ移った30代後半の男性によるものです。法務やコーポレート部門の責任者としての経験を持ち、入社時の報酬に現金給与と譲渡制限付株式のRSが含まれていました。
ご本人はRSの確定条件を確認しきれないまま、他社より高い現金給与のほうを優先しています。この選択の背景には、RS特有の理由があります。
RSは、一定期間の継続勤務を満たすと譲渡制限が解除され、はじめて売却できる株式です。期間は3年で区切られることが多いです。
見落とせないのは、その期間の途中で退職したときです。条件を満たす前に辞めると、未確定分の株式は会社に無償で取得され、手元には残りません。
あわせて確認したいのが課税のタイミングです。制限が解除された時点で、その時の株価を基準に給与所得として課税されます。株式を売って現金化する前でも税金がかかるため、納税資金の準備が必要になることがあります。
これらの条件は、オファーレターや後日結ぶ割当契約に書かれるのが原則ですが、入社直前まで詳細が示されないこともあります。確定までの期間と退職時の扱いは、書面と担当者への質問で早めに押さえておいてください。金額の大きさだけで比べると、実際に手元に残る額を読み違えるからです。
複数オファーがあるときの年収の伝え方
ご本人は現在の会社に希望額を言わず、後悔のない条件にしてほしいと相談しています。この伝え方は角が立ちにくい反面、金額の判断を相手に委ねる面もあります。
複数社からオファーがきているなら、他社の提示額は交渉の材料になります。使い方にはコツがあり、事実として淡々と伝えるのが基本です。
たとえば「他社から◯◯万円の提示を受けていますが、御社が第一志望です」と伝えるとよいでしょう。第一志望である点を必ず添えてください。金額だけをぶつけると、条件次第で辞退する人だと受け取られ、交渉力がかえって弱まりかねません。
希望額を伝えるときは、現在の年収と自分の実績をセットにすると効果的です。企業は根拠のある金額かどうかを見ているからです。バックオフィス職は成果を数字で示しにくいため、保有資格や担当してきた業務の範囲を根拠に並べると、話が通りやすくなります。
一度承諾すると金額の見直しは難しくなるので、条件が固まる前に「ここは下回れない」という下限を自分で決めておいてください。下限を持っておくと、相手任せにせず、落ち着いて交渉の線を守りやすくなります。
まとめ
ご本人は前職で法務としてIPOを経験し、その実績を評価されてAI企業へ転職しました。年収と働き方は改善し、AIに関する知識や行政とのつながりも得られました。
その一方で、仕事の目的や評価基準の見えにくさには物足りなさを感じています。目先の条件だけでなく、数年後に手元へ何が残るのかまで見て転職先を選ぶことの大切さを学んでいます。転職を考える方は、報酬の中身と入社後のキャリアの広がりまで想像してみるとよいでしょう。
